2022年10月18日火曜日

「加齢性難聴の補聴器助成」について質問

 10月14日、第3回定例会 第二部決算特別委員会で「加齢性難聴の補聴器助成」について質問しました。

決算特別委員会で質問する吉岡市議(=10月14日、札幌市議会)


 

以下、文字起こしで紹介します。

 【吉岡 委員】

私は加齢性難聴の補聴器助成について質問させていただきます。2020年2月にコロナが感染が拡大してから、高齢者は外出の機会もほとんどなくなり、フレイル発症や要介護リスクが心配されてまいりました。ようやく介護予防教室や老人クラブなどが再開されてきたところですが、高齢者の方が楽しみにしている食事会などはまだ控えられている状態です。 

加齢性難聴は耳の奥の音を感じる細胞が加齢に伴ってダメージを受けて起きる症状です。国際医療福祉大学三田病院耳鼻咽喉科の岩崎聡教授によると、国内の研究では60代前半で5人から10人に1人、60代後半で3人に1人、75歳以上で7割以上が加齢性難聴になっていると推定され、全国では1500万人以上に上るとみられるそうです。岩崎教授は、五十歳を過ぎた頃から聞こえにくくなったという自覚のある人は、加齢性難聴の始まりである可能性が高いと指摘します。

 札幌市の補聴器助成では身体障害者手帳の対象とならない軽度、中等度の難聴のある18歳以下の子供と、聴覚身体障害6級と認定された市民が補聴器購入の助成を受けることができますが、軽度、中等度難聴の方には助成制度はありません。

補聴器助成の対象となっている方、全年代で5275人おりますが、そのうち65歳以上の高齢者は3832人です。高齢になって聞こえが悪くなることで他人との関わりを敬遠するようになり、コミュニケーションが億劫になって家に閉じこもりがちになる問題が指摘されています。また転倒のリスクが高い、車の接近が気づかないなど命に関わる問題でもあります。

 そこで質問いたしますが、札幌市高齢者支援計画2021では認知症予防の施策や健康年齢の延伸の取り組みを掲げていますが、その実現のためには軽度中度を含む難聴者への支援が欠かせないと考えますが、いかがか伺います。

 

【西村 高齢保健福祉部長】

高齢保健福祉部長の西村でございます。軽度中等度の難聴の高齢者に対する支援の必要性ということでございます。加齢に伴う難聴でございますが年齢の進行で起こり得るものでございまして症状が進行することで適切な聞こえが得られず、委員ご指摘の通り、人とのコミュニケーションが難しくなって社会から孤立、またそういったケースがあることで認知機能の低下につながるという、そういう危険因子の一つであるということを承知しております。

一方で認知症の予防という観点におきましては運動、社会交流、趣味活動などの日常生活における取り組みが、認知機能低下の予防につながる可能性が高いとそのように言われているものですから、支援と致しましては予防効果を考えながら、これらを適切に選択し実施する必要があるとそのように考えているところでございます。以上でございます。

 

【吉岡 委員】

聴覚は言語、思考、情動にも深く関わっており、コミュニケーション機能の中枢として極めて重要な感覚であり、他の感覚に比べて認知症との関係が強いと考えられています。慶應義塾大学耳鼻咽喉科小川郁(かおる)氏は、論文『認知症と加齢性難聴 ー 認知症予防対策における補聴器の役割 ー』で「難聴は認知症の危険因子であり、難聴への介入は認知症の予防法として最も有効であることが明らかになっている。従って、少なくとも軽度認知障害の時点で難聴がある場合はできるだけ早く補聴器の装用など対策を考える必要がある。」とまとめています。

 2015年、「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」の具体的な施策には認知症の危険因子として初めて難聴が加えられました。早期発見が重要ですが一人暮らしなどでは気づきにくく、また少しくらいだからまだ大丈夫だと対応が遅れがちです。行政として聞こえの気付きを促すことが必要だと考えます。

 そこで質問ですが、聞こえづらさを感じている方がどのような状況なのか、認知症予防の観点からも本市として実態調査を検討してはどうか伺います。

 

【 西村 部長】

認知症の予防の観点からの実態調査ということの必要性ということでございます。

加齢に伴う難聴の進行によりまして高齢者が社会的孤立や、うつ、認知症、フレイルに陥る危険性を高めるといった研究があるとそういったことや、あと今お話がありました新オレンジプランの「認知症施策推進総合戦略」の方で難聴は加齢や遺伝性、高血圧、糖尿病、喫煙、頭部外傷と合わせて認知症の危険因子の一つとされているとそのように了解するところございます。

一方、適切に補聴器を用いることで認知症の発症を軽減させ得る可能性があるかとそういったことについては、現在国において研究が進められている途中ということでございます。この研究により実態の把握が進められている最中ということでありますので、札幌市としていたしましては、その結果を注視して参りたいとそのように考えているところでございます。

 

【吉岡 委員】

「札幌市高齢者支援計画の2021」ではいくつになっても住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるまちづくりを基本目標にしています。本市は他の政令市とともに国に対して、聴覚障害の補正による認知機能低下の予防効果を検証するための研究の結果を早期に取りまとめ、医学的根拠を踏まえた上で、加齢性難聴者の補聴器購入に対する全国一律の公的補助制度の創設を要望しています。研究待ちではなく難聴によって市民がどのような状況にあるのか実態を把握すべきではないでしょうか。

 本市は次期介護保険計画に向けて市民と認定者へのアンケートを行うとのことでありますから、難聴補聴器の項目をぜひ入れることを求めます。また本市のとくとく検診や後期高齢者健診の項目に聴力検査を入れることや、耳の日や健康イベントなどで実施するなども検討されるよう求めておきます。

 これまでの我が会派の質疑で難聴が進んで聞き取りが悪くなることに対して、本市は日常生活や社会参加に影響があることは認識している。補聴器は高齢者の各々が必要とされたタイミングで使用していただくことが適当であると答えられています。しかしそう言われても数万から数十万と大変高額で必要とされたタイミングで購入できないという声をよく聞きます。

相模原市は政令市で初めて本年度助成制度が実施され、北海道では北見市根室市に広がっています。北広島市では補聴器公費助成の請願が全会一致で採択されています。本市では昨年10月に市民団体から市長宛に加齢性難聴者の補聴器購入の助成制度を求める署名と要望書が提出されたことをはじめ、市民からの声は高まっています。

そこで質問ですが札幌市でも加齢性難聴者への補聴器助成が待たれています。本市の認識を伺います。

  【西村部長】

補聴器購入の助成に対する本市の認識ということございます。現在、国において進められている研究におきまして認知症の予防効果が認められる場合には補聴器購入の支援については、やはり住んでいる地域に関わらず同じサービスを受けられるようになることが望ましいと、そういうふうに考えているところでございます。先ほど委員からご指摘ありました通り、全国の21大都市合同でですね、国に対して医学的エビデンスを踏まえた上で加齢性難聴者の補聴器購入に対する全国一律の公的補助制度を創設するよう求めているというところでございます。今後もまずあの研究の結果というものですね早期に取りまとめていただきたいこと、それから補助制度等を創設する場合には、政策的予算的に実現および持続可能な制度となるよう要望して参りたいと、そのように考えているところでございます。以上でございます。

 【吉岡 委員】

加齢性難聴者が、安心できるコミュニケーションを補聴器によって取り戻すことができれば、心身の健康寿命の延伸にも繋がります。加齢性難聴者への補聴器助成の速やかな実施を求めて質問を終わります。

 

質問の音声はこちらからお聞きになれます。