2021年11月30日火曜日

11月29日(月)総合交通政策調査特別委員会

2021年11月29日(月)、陳情第32号「北海道新幹線札幌延伸地下トンネルルート位置変更等に関する陳情」の審査が行われました。

 

質疑に立つ吉岡市議(=11月29日、総合交通政策調査特別委員会)

 

以下、質疑を文字起こしで紹介します。

【吉岡 委員】

今、質疑のなかでもありました。陥没事故など断じてあってはならないとありました。

私たち、一番 予防原則に立つことではないかと思います。環境問題や保健衛生に対応するための基本原則の一つですが、科学的な安全性の立証とともに、予防的な行動を積極的に採用する。被害発生前に措置を講ずるべきとする考えといわれています。人命、財産に被害が発生してからでは遅いわけで、マンションの住民のみなさんも、補償より先に、安心して住み続けられるようにしてほしいと、そういう願いから陳情をされたのであります。まず、そのことに誠心誠意対応してほしいと思います。

それでは質疑に入らせていただきます。

最初の質問は、陳情書1ページにあります要旨1についてです。要旨①ですけれど、「トンネルルートをマンション直下から可能な限りJR高架側に移動させるなどルートの再検討を行って欲しい。また、移動により空いた空間において十分な地盤強化対策を講じさせ、マンション建物に影響が出ないようにして欲しい。トンネル位置の移動が不可能であれば、住民が安心できる具体的な地盤強化対策の提示、土地の買上げ・マンション建設代替地の提案などについて、住民に懇切かつ具体的に示して欲しい」とあります。

機構に対して住民への回答をするように、札幌市は促すべきだと考えますけれど、いかがか伺います

【 生野 新幹線推進室長】

 新幹線推進室長の早野でございます。ルート変更などについて鉄道運輸機構へ促すことに対する札幌市の考え方についてお答えいたします。

先ほどお答えいたしましたとおり、トンネルのルートにつきましては、鉄道運輸機構が現地調査や技術的な設計基準に基づき決定しているものでありまして、機構からは当該マンションに影響を与えないよう、安全に工事を進めるものと聞いております。

その施工方法や対策方法の詳細につきましては、今後専門家による第三者委員会に諮りまして審議されることから、札幌市としましては鉄道運輸機構がその審議結果をふまえたうえでトンネル工事を進めるものと考えてございます。以上でございます。

【吉岡 委員】

 住民への回答をするように札幌市は機構に対して促したんでしょうか?そのことについて伺いたいと思います。

 【生野 新幹線推進室長】

 札幌市も機構とともにですね、住民説明会等に出席しておりますので、機構には丁寧に説明をするように求めているところでございます。

【吉岡 委員】

 丁寧に説明がされていないから、このような陳情があがっているのだというふうに思います。住民の不安に答えているというふうには感じられませんでした。

次は陳情書用紙の②に関連しますが、2ページ目の②に関わって質問させていただきたいと思います。

札幌市の主催で2017年(平成29年)に地下ルート案の沿線住民への説明会。そして機構の主催で8月から9月に住民説明会がありました。2016年に環境アセスメントが作成されたわけですけど、陳情書では、札幌市においては、かかる超近接ルートや、その危険性を承知の上で環境アセスメントも賛同したのでしょうかと書かれています。

 このことについてお聞きします。併せて、市長はどのような理由で同意されたのか。また、機構は説明会で地盤沈下による被害事例の説明をされてきたのかどうか。説明されていれば、それを受けて市は、どのように対応されてきたのか、お伺いいたします。

 【生野 新幹線推進室長】

 ルート変更にともなう環境アセスメントの同意ならびに地盤沈下への被害事例の説明についてお答えをいたします。先ほどもお答えしましたとおり、アセスメントにつきましては、個別の建物への影響を評価するものではなく、地下トンネルの構造変更にあたって鉄道運輸機構が自主的に環境に影響を及ぼす恐れのある要因を検討し、予測と評価の見直しを行ったものであります。 

その予測と評価は事業全体を評価したものでありまして、対策を行うことで周辺環境に大きな影響は生じないという結果になってございます。

札幌市としましても、この評価については法令の趣旨にのっとって適切に行われているものと認識をしております。また、シールドトンネル工事における事故事例につきましては、当該マンションの住民説明会におきまして鉄道運輸機構から説明をしております。以上でございます。

【吉岡 委員】

 二つ目に、市長はどのような理由で同意されたのかということでお聞きしました。やはり、住民のみなさんにとっては、住民のみなさんの命にかかわる、人生にかかわる、本当に大事な問題でありますから、市民を代表する市長として、どのような理由で、一般的に考えればとても危険だというふうに、誰もが思うような状態です。ですから、この状況に対して市長がどのような理由で賛成されたのかということを伺いたいと思います。

【生野 新幹線推進室長】

 トンネルルートの変更につきましては、先ほどお答えしましたとおり、騒音ですとか、振動、日照障害、地域分断など、そういった生活環境への影響を懸念する声が出たことにより、札幌市と北海道が鉄道運輸機構に変更を求めたところでございます。

それにともなってトンネルルートへ変更したわけですけど、その環境アセスメントにつきましては、今お答えしましたとおり、対策を行うことにより周辺環境へ大きな影響を生じないという結果となっておりますので、この結果については法令趣旨にのっとって適切に行われていうことで同意した所でございます。以上でございます。

【吉岡 委員】

 法令にのっとっているということでしたけれども、法令だけが全てではないというふうに思います。また、地盤沈下の被害事例についてお話しされたというふうに言っておりましたけれども、この2017年の住民説明会の中でされたんでしょうか。最初の段階でされたんでしょうか。そのことについて伺います。

【生野 新幹線推進室長】

 地盤沈下につきましては、昨年に首都圏で起こった沈下の事例ということですので、今年の7月の説明会において説明をしているところでございます。以上でございます。

 【吉岡 委員】

2015年と2017年の6月に北陸新幹線の高丘トンネル、長野県の中野市になりますけど、ここでは2回、陥没事故が起きています。トンネルの真上で住宅が被害を受けたというのが、そのうちの一つですけれども、これは本当に重大な陥没事故の例だというふうに思います。

ですから2017年の6月に起きてて、その後に機構が説明会をしているわけですから、このことはやはり、真摯な態度というのであれば、きちんと住民のみなさんに説明する必要があったのではないかというふうに思います。陥没の事実を伝えないのは誠意がない対応だと思います。

そして2017年(平成29年)の住民説明会では、このときの資料を見させていただきましたが、20ページには検討中のトンネルの深さというところには、おおむね20メートルから50メートルというふうに、西区、手稲区のところなんだと思うんですけれども、書かれておりました。

ですから、この説明書を見る限りでは、ここのこの桑園の部分は、こんなに地表から浅いところにあるというのは、これはわからなかったんじゃないかなというふうに思います。

マンションの真下を食い込むようにトンネルが通過するということを住民のみなさんが知ったのは、先ほどから言われているように2020年(令和2年)の5月です。説明を受けたというのではなく、住民のみなさんからの問い合わせでわかったというふうに陳情では書かれておりました。

新幹線トンネルとマンションの基礎との位置関係、先ほどから言われています。最短では4.3メートル、マンション基礎に対し保護層が42.6センチ食い込んで、同じくマンションの壁には2.6センチ食い込んでる。トンネルの上部はわずか5メートルです。 

札幌市街地のトンネル工事で、他にもこの陳情と同じように建物の下に食い込む場所があるのか。また、食い込む場所が何カ所あって、建物から何メートルの位置なのか伺います。

【生野 新幹線推進室長】

建物下に構築されるトンネルの場所と深さについてお答えをいたします。札幌市内のトンネルルートにおきましては、手稲区などで住宅などの建物下を通過している箇所があります。その深さとしては地表面から15メートルから60メートル程度となっております。

また、当該マンション付近におきましては、当該マンションと同様に建物やJR在来線の高架橋などに建設している場所がございます。いずれにしましても、鉄道運輸機構において付近の建物などへ影響を及ぼさないようしっかりと対策を行いながら工事を進めていくものと認識をしております。以上でございます。

【吉岡 委員】

 いずれにしても、こんなに浅い場所で、4メートルしか離れていない。これはここだけだということがわかりました。次に5ページの経緯について質問させていただきます。

マンションのわずか4メートル地下を新幹線トンネルが通るのをマンション住民が知ったのは2020年5月と何度もお話しされていますが、機構が測量した後に白いペンキでマーキングがあるのを発見して、それを問い合わせたら、そうだったということが、この位置が分かったということでした。

札幌市がこのようにトンネルがマンションの近くを走る事実、食い込むのを知ったのはいつなんでしょうか。またこのマンションは基礎杭のない直接基礎方式となっていますけど、杭があったらトンネル工事は可能だったのか、また、このような基礎杭のないマンションの側を、こういうところにトンネルを掘っている事例は全国であるのか伺います。

【生野 新幹線推進室長】

札幌市がマンションとトンネルの位置関係を知った時期。それから、もし杭があった場合工事はどうだったのかということ。それと、杭のないマンション付近での施工事例について3点ご質問があったということでございます。

まず初めに、札幌市が当該マンションとトンネルとの位置関係を把握した時期についてでありますが、新幹線事業における用地測量が完了した令和2年、昨年6月ごろでございます。

また2点目の、杭があった場合に施工が可能だったかということでありますが、杭の長さですとか、シールドトンネルと杭との近接度合いなどによっても問い合わせが異なりますことから、工事が可能なのか支障移転が必要なのかについては一概にいえないものと考えてございます。

3点目の、杭のないマンション付近の施工事例についてでありますが、マンションではありませんけど、首都圏の地下鉄において杭のないビルの下を、シールドトンネルが通過する例があると鉄道運輸機構から聞いてございます。以上でございます。

【吉岡 委員】

「桑園地区のあゆみと現在の姿」というのがネットにあったんですけれど、明治の8年に山形県の酒田藩の旧武士たちが開拓して、そして昭和のはじめには、このように書かれているんですけど、桑園駅の南側、自動車学校があった辺りに直径50メートルくらいの沼があったと書かれています。

先ほど陳情者のお話にもありましたけど、地理院の古い地図を見るとトンネルルートを挟んでかなり広い川がマンションの位置にあります。陳情書には5メートルから7メートルというふうに書いていますが、地図を見るともっと広いふうに見えております。サケも遡上していたというふうに書かれています。陳情書にはマンション地下には揚水ポンプを設置して湧き水に対応しているというふうに書いています。川は埋めても水脈は消えるわけではないですから、地盤沈下の不安はもっともなことだと思います。

路面空洞連絡会というのがあるんですけれども、そこの第一回路面空洞連絡会の路面下空洞調査結果というのが出ております。これによりますと札幌市の地下鉄路線における155キロを調査しているんですが、ここにおける胆振東部地震前後の空洞化所が調べられています。地震前、これは2013年ですが、317ヵ所だったのが、地震後、これは地震のあった2018年、その後に調べていますが、539ヵ所と1.7倍に増えています。当然、私たちが住む日本列島いつ地震があるかわからないわけですから、地震で空洞が増えるということが、この調査の中からも明らかに示されているということです。

次の質問は6ページにかかるところですが、昨年12月、住民の要請でマンション直近の位置2か所で地質調査を実施されましたが、その結果について伺います。マンションの方々が一番不安なことは地盤沈下だと思います。機構も札幌市も地盤沈下がないと言い切れるのか伺います。

【生野 新幹線推進室長】

地盤沈下の可能性についてお答えいたします。先ほどお答えしましたとおり、トンネルへの構造変更にあたって実施しました環境アセスメントにおきましては、地下水の排水を行わない密閉型シールド工法を採用することによりまして、地下水位の低下による地盤沈下のほとんど生じないとされているところでございます。

また、トンネル工事におきましては近隣の地盤や建物に変異が生じることがございます。鉄道運輸機構が実施した解析によりますと、当該マンションにおいても、変異が生じると予測されていますけれども、建物には問題がないと聞いてございます。

なお、この結果につきましては、今年の7月に開催した住民説明会においてマンション住民の方々にも説明しているところでございます。

いずれにしましても、トンネル工事におけるマンションへの影響につきましては、鉄道運輸機構が第三者委員会に諮り、その審議結果をふまえた上でトンネル工事を進めるものと考えてございます。以上でございます。

【吉岡 委員】

ボーリング調査結果を私も見せていただきました。法律上は問題ないということですけれど、どちらのマンションも調査では、部分的とはいえN値が低い部分が存在しているというのは事実です。

実際には北陸新幹線のトンネル化で陥没被害が発生したのも、神奈川県横浜市相鉄の陥没事故も、東京都調布市の東京外環道路の陥没事故も、いずれもトンネル工事が違法だったわけではありません。法律が万全かと言えば、そうではないと思います。

マンションの状況は先ほどから言われているように、様々な不安要素が重なっています。だから住民のみなさんは不安をぬぐいきれないわけで、陳情で訴えています。これは全く道理のある事ではないかと思います。陳情書で何度も繰り返し訴えているのは、機構に要請して回答を促してほしい。住民に懇切かつ具体的に示してほしい。わかりやすく説明してほしい。こういう言葉が10回以上ありました。

札樽トンネルの富丘工区では、夏から掘削工事が始まりました。先ほどもお話があったように明かり工区、北8条西12丁目から北5条西8丁目の対策部分といわれているところですが、ここの工事は来年早々、着手されることになっています。

陳情書9ページにあります、「万が一を考えここは一旦立ち止まり、トンネルコース(線形)確定前に、有識者委員会を設置して安全性を証明し、住民に開示してほしい。」そして札幌市がその立場にしっかりと立ってほしいというのが住民のみなさんの願いではないでしょうか。

新幹線2030年札幌開業が先にありきで住民との合意がないままに工事が進められることのないよう、この陳情が採択されるよう私からも訴えて質問を終わります。