2020年3月17日火曜日

第1回定例会 3月16日予算特別委員会 地域包括支援センター・補捉給付について質問

2020年3月16日 第2部予算特別委員会(保健福祉局所管)で介護保険の地域包括支援センターと補捉給付について質問しました。文字起こしで紹介します。
第二部予算特別委員会で質問する吉岡市議(3月16日)

 【吉岡 委員】
 私からは介護保険で定められた地域包括支援センターと 補足給付の2点について質問させていただきます。はじめに地域包括支援センターについて質問いたします。
 
 2000年に始まった介護保険制度から20年が経過しました。この間、度重なる制度改悪によって高齢者へのサービス抑制と、保険料、利用料の負担は重くなる一方です。
政府がそのたびに強調する制度の持続可能性の確保は、利用者や家族の生活の継続でも、介護事業の継続や、職員が長く働き続けられることでもありませんでした。

 2012年からは入院から在宅へ。医療から介護へ。さらに介護から市場・ボランティアへと地域包括ケアの構築の元、安上がりな制度へと進められてまいりました。
2017年の法改正では、地域包括ケアは高齢者だけではなく障がい者も含めた全世代型の地域包括ケアに切り替えられています。

 地域包括支援センターの役割は、総合相談支援業務、権利擁護業務、包括的・継続的ケアマネジメント支援業務、介護予防ケアマネジメント業務の4つです。このような中で高齢者や地域包括支援センターが何に困っているのか把握することが必要だと思います。

  昨年8月、2019年度第1回札幌市地域包括ケア推進会議、地域包括支援センター運営協議会が開かれた際の資料では、2018年度の困難事例支援が265件となっています。 
 そこで質問ですが、困難事例とは具体的にどのような内容で、どのようして対応したのか伺います。

 【石川 地域包括ケア推進担当部長】
  地域包括支援センターが扱う困難事例と、その概要についてとしてお答えいたします。 地域包括センターは高齢者やその家族からの相談に対応するほか、また地域のケアマネージャーからの相談にも応じている状況でございます。

困難事例としましては、単身高齢者が増えまして、地域の結びつきが失われつつある中で、例えば認知症が疑われ生活に支障のある方、また住まいの問題や消費者被害にあわれた方、精神疾患と生活困窮を同時に抱える方など、相談内容が非常に複雑化し多様化してきている状況でございます。

対応につきましては、現在、地域包括支援センターを中心に日頃から関係機関と連携するほか、消費者センターや弁護士など専門職とのネットワークを構築し、課題解決に向け対応を行っているところでございます。以上でございます。

 【吉岡 委員】
 つづいて質問いたしますが、265件の困難事例の総括的な分析や評価、課題はどのように把握しているのか。困難事例支援の解決方法など共通認識にすることや、ノウハウの継承などは、どのように行っているか伺います。

【石川 地域包括ケア推進担当部長】
 困難事例の集約また評価、ノウハウの継承のご質問かと思います。札幌市におきましては各センターで運営しております個別地域ケア会議で個々の事例について集約、また分析、課題抽出などを行っており、そこから明らかになった共通する課題を地域や区、また全市レベルの地域ケア会議において共有し、解決に結びつける仕組みを整理しているところでございます。さらに各センター間で支援方法などについて情報を共有し、具体的な対応策を検討することで、各センターのノウハウを他のセンターにも活用いただける機会を設けているところでございます。以上でございます。

【吉岡 委員】
 困難事例やまた、その困難事例の評価や課題、そしてノウハウの継承とご回答いただきました。

このような困難な方々に必要なサービスをどのように提供するのかが大切だと思います。 困難事例が2018年1年で265件もあるということで驚き、胸が痛みます。2018年度の地域包括ケア会議、地域包括支援センター運営評議会では、札幌市において支援につながらない方が多いということも出ております。介護に結びつかない高齢者は介護サービスを受ける費用が心配なのか、それぞれの理由があろうと思いますが、ここに表れている数字というのは氷山の一角ではないでしょうか。

今年度の会議の議事録では困難事例についての具体的な話し合いがなされていないようですので、議題にしていただき、他機関との連携をさらに強めるなど、困難事例を活かした取り組みにさらに力を入れていただきたいと思います。

 次に補足給付の見直しについて質問いたします。
補足給付は介護保険施設等の食費や居住費について、所得に応じて負担を軽減する制度です。2005年10月から食費や居住費が介護保険給付から外されたときに創設されました。

2021年度から始まる第8期介護保険事業計画に向けて、今政府が進めている補足給付の要件見直しは、特養や老健などの介護保険施設入居者のうち新たに設けられた第3段階2の方が食費で新たに月額22,000円の自己負担を上乗せされるとし大問題となっています。第3段階2というのは 年金収入が年間120万円から155万円の方たちです。

 特養に入居している90歳代の女性は昨年入所し、夫も高齢者住宅に入所しています。お二人には帰る家はありません。女性は要介護5で自分の体を思うように動かせず、生活全般において介助が必要です。認知症も進行しており言葉でコミュニケーションを取ることが非常に難しく、手厚い介護が必要で受け入れ施設は限られています。

この女性の年金は月10万円です。入所費用は介護保険分24,600円、食費19,500円、居住費39,300円でこれを合計すると83,400円。残りの16,600円から介護保険料や医療保険料そして医療費を払います。しかし政府が今進めようとしている補足給付の改悪で、食費は現在の19,500円に22,000円が上乗せされると10万円の年金では到底足りません。家もたたんで特養に終の棲家として暮らしている高齢者を政府は退所しろというのでしょうか。

2015年から補足給付の所得基準に起算要件が加わり、2016年には非課税の障害年金や遺族年金も収入とみなされるようになって補足給付は立て続けに縮小されています。

「21世紀老人福祉の向上を目指す施設連絡会」は、昨年10月から全国1万の特養老人ホームなどの施設長を対象にアンケート活動を行い、2,363通の回答が寄せられたことを発表しました。アンケートではこの間の改定で支払い困難を理由に退所した事例が113件、そのうち4割が「補足給付の見直し」と答え、家族の経済状況の変化も多く上げられました 

 そこで質問です。自己負担が上がり、さらなる補足給付の改悪で自己負担が上がり、介護保険施設から出ざるを得ない高齢者、入ることができない高齢者を生み出すことに対し、本市の認識を伺います。あわせて実態を把握すべきと思いますがいかがか伺います。

【石川 地域包括ケア推進担当部長】
補足給付の見直しと実態調査についてお答えいたします。

1点目の補足給付の見直しにかかる認識についてでございますが、国においては介護保険制度の持続可能性の確保のため補足給付などに関する給付のあり方について、負担と給付のバランスや公平性の観点から様々な検討が行われたと認識しております。
従前から札幌市におきましては、介護保険制度全体として低所得者の経済的負担などに配慮した制度設計がなされるよう繰り返し国に求めてきたところでございます。今後も引き続き国の動向を注視し、低所得者を含めた高齢者へのサービスの提供に支障が生じないよう介護保険の運営に努めてまいりたいと考えております。

2点目の実態調査についてでございますが、現時点では国の審議会において補足給付などに関する給付のあり方についての意見が提示されている段階でございますので、まずは札幌市としては今後も国の動向を注視してまいりたいと考えているところでございます。以上でございます。

【吉岡 委員】
 先ほどの女性の要介護5、認知症もあって帰る家もない高齢者が、年金収入より入所のための費用が上回るから入所の継続ができないという状況をつくりだすことは大問題ではないでしょうか。高齢者のくらしの継続ができないで、政府がいう制度の持続性の確保にはどんな意味があるのでしょうか。

90歳の女性の事例のようなことは、これは一人や二人ではありません。多くの方が介護費用を捻出するために大変な思いをしています。それでも年金だけでは難しいから家族の支援を受けて入所している人も少なくありません。負担増は利用者のみならず、介護者家族の家計に重すぎる負担となり、介護保険を支える現役世代にも痛みを押し付けるものです。

改悪されたらどうしようかと困っている市民がいるのですから、本市が実態をつかむのは当たり前です。2021年度補足給付の大改悪で高齢者の限りある春をけして涙で曇らせないでください。「制度の改悪はすべきではないと」本市として国に求めるべきと申し上げて質問を終わります。

質疑の音声はこちらからお聞きになれます。 


市議会の委員会中継のホームページに動画がアップされました。
動画は こちら からご覧になれます。